炎症性腸疾患内科
炎症性腸疾患とは
潰瘍性大腸炎、クローン病などの病気の総称です。
幅広い年齢で発症しますが、10~20歳代の若年層に好発します。近年潰瘍性大腸炎、クローン病ともに増加傾向を認めています。
潰瘍性大腸炎は大腸、クローン病は小腸や大腸などの全消化管に炎症をきたし、下痢、血便、腹痛などの症状を起こします。原因はまだ不明ですが免疫機能の異常をはじめとした様々な要因が関連しているのではないかと考えられています。
こちらのサイトに詳しい記載があるのでよろしければご覧ください。
当院の炎症性腸疾患診療の特徴
炎症性腸疾患の診療経験が豊富です
これまでに数多くの炎症性腸疾患の患者様の診断、治療に携わってまいりました。長期間の下痢や血便などの症状でお困りの方はご相談ください。
消化器内科専門医である西村 聡は木曜日は姫路赤十字病院での外勤のため不在となります。お手数をおかけしますが炎症性腸疾患についての治療をご希望の方は木曜日以外に受診をお願いいたします。
難病指定医です
潰瘍性大腸炎、クローン病はいずれも難病指定疾患で、重症度や治療内容に応じて助成を受けることができます。西村聡は難病指定医の認定を受けていますので、申請に必要な診断書(指定難病臨床調査個人票)を作成することができます。
治療方針
基本的には、全国の炎症性腸疾患専門医の意見でまとめられた厚生労働省のガイドラインに則った、安全性と治療効果が確かめられた治療を行います。そして患者さまのライフスタイルも加味して治療についてご相談させていただきます。
当院では基本治療薬の5-ASA製剤に加えステロイド、免疫調節剤などを用いた治療を行っています。多量のステロイドや、白血球除去療法、生物学的製剤などによる治療が必要な方、入院加療が必要な方は提携病院にご紹介させていただきます。
潰瘍性大腸炎
潰瘍性大腸炎とは
「炎症性腸疾患」という腸に炎症が起きる病気の1つで大腸の粘膜に炎症を起こしてびらんや潰瘍を作り、下痢や血便、腹痛といった症状を来たします。原因はまだ完全に解明されてはいませんが、免疫異常が関係していると考えられます。
国が定めた指定難病の1つで、申請を行えば重症度や治療費用に応じて助成がでます。
2014年の統計では日本には約18万人の潰瘍性大腸炎の患者様がおり、その数は年々増加しています。
潰瘍性大腸炎は若年者から高齢者まで起こりえますが、発症年齢の主なピークは男性では20~24歳、女性では25~29歳です。しかし最近では、40代以降でも多くの人が発症すると言われています。
潰瘍性大腸炎の症状
症状としては下痢や血便、腹痛、発熱などがあります。また、長期間炎症が続くと貧血や体重減少をきたすことがあります。
長く続く下痢や血便があれば一度医療機関を受診することをお勧めします。
潰瘍性大腸炎の種類
炎症の範囲によって主に「直腸炎型」、「左側大腸炎型」、「全大腸炎型」の3つのタイプに分けられ、各々20%、40%弱、40%弱程度を占めています。
また、他のタイプとしては「右側あるいは区域性大腸炎型」もありますが、頻度は少ないです。
病気の経過によっては「初回発作型」、「再燃寛解型」、「慢性持続型」、「急性劇症型」の4つに分けることができ、下記の図に示すように約半数の方が「再燃寛解型」です。再燃寛解型というのは治療をすることで一旦は寛解期(症状が落ち着いている状態)になりますが、何かのきっかけで再燃(症状がぶり返してしまうこと)してしまうタイプのものです。きっかけとしては風邪や腸炎などの感染症、肉体的・精神的なストレス、服薬の自己中断などがあります。
重症度(病気による症状の程度)によっては「軽症」、「中等症」、「重症」に分けられますが、下記の図に示すように軽症から中等症の方が大半を占めます。
潰瘍性大腸炎の検査・診断
まずは問診で症状がいつから始まってどの程度のものなのかを確認します。
次に血液検査で炎症や貧血の有無や、栄養状態を確認します。
その後、大腸内視鏡検査を行って大腸粘膜の所見が潰瘍性大腸炎に合致するのかどうかや、炎症の範囲や程度を調べます。この際に粘膜の一部を採取して、顕微鏡で詳しく調べることが多いです。
また便検査を行い、感染性腸炎(細菌などによる腸炎)の除外も行います。
この様な様々な検査や問診から総合的に診断を行います。
潰瘍性大腸炎の治療
治療の基本は潰瘍性大腸炎の炎症を抑える薬物療法になります。
治療法は下記の2つに分けて考えていきます。
「寛解導入療法」:活動期(症状が続いている状態)の炎症を落ち着かせて、寛解期(症状が落ち着いている状態)に持ち込む治療
「寛解維持療法」:寛解の状態を維持して、再燃をふせぐ治療
まず、寛解導入療法を行い寛解状態に持ち込むができれば、その後寛解維持療法を行っていきます。症状がほぼなくなった状態でも大腸粘膜の炎症は残っている状態(臨床的寛解 / 内視鏡的活動期)の場合があり、症状も大腸粘膜の炎症もない状態(内視鏡的寛解(=粘膜治癒) )になるまで治療を行い、粘膜治癒を維持することが重要になります。
治療は薬物療法が中心となりますが、他に血球成分吸着除去療法や手術療法があります。
【薬物療法】
・アミノサリチル酸製剤(5-ASA)
軽症~中等症の潰瘍性大腸炎治療の中心となる治療薬です。「寛解導入療法」にも「寛解維持療法」にも用いられます。
アミノサリチル酸製剤には、「飲み薬」や「坐薬」、「注腸製剤」など様々な種類があり、 患者様の症状や病変の範囲、ご希望に合わせて、どの薬を使用するか選びます。
・ステロイド
炎症を強力に抑えますが、長期間使用すると副作用が現れやすくなるため、炎症が落ち着いてくれば量を減らしていって、最終的には中止します。寛解を維持する効果はないため、「寛解導入療法」として用い、他の薬で「寛解維持療法」を行います。
・免疫調整剤(チオプリン製剤)
過剰になっている免疫反応を抑えることで、炎症を抑えてくれる薬です。飲み始めてから効果が出るまでに時間がかかるので、他の薬と併用して「寛解維持療法」として用います。
・免疫調整剤(タクロリムス、シクロスポリン)
上記のチオプリン製剤と同様に免疫調節剤に分類される薬剤です。チオプリン製剤と違うのは、これらの薬剤は早期に効果を発揮するため炎症が強い時期に「寛解導入療法」として用いられます。寛解を維持する効果はないため、他の薬で「寛解維持療法」を行います。
ステロイドによる治療効果が見られないステロイド抵抗例とステロイドの減量・中止によって再燃してしまうステロイド依存例に用いられます。
・生物学的製剤(インフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、ベドリズマブ)
過剰になっている免疫反応を抑えることで、炎症を抑えてくれる薬です。点滴の薬や皮下注射の薬があります。「寛解導入療法」としても「寛解維持療法」としても用いることができます。重症な方やステロイドによる治療効果が見られないステロイド抵抗例、ステロイドの減量・中止によって再燃してしまうステロイド依存例などに用いられます。
・JAK阻害薬(トファチニブ)
過剰になっている免疫反応を抑えることで、炎症を抑えてくれる薬です。毎日飲む内服薬で、「寛解導入療法」としても「寛解維持療法」としても用いることができます。重症な方やステロイドによる治療効果が見られないステロイド抵抗例、ステロイドの減量・中止によって再燃してしまうステロイド依存例などに用いられます。
【血球成分吸着除去療法】
血液を腕の静脈から体外に取り出し、特殊な筒(カラム)に血液を通過させることにより炎症に関わる血液成分を吸着させて取り除き、また血液を戻す治療法です。
顆粒球・単球・リンパ球・血小板を除去する方法と、顆粒球・単球を除去する方法があります。
【手術療法】
下記のいずれかに該当する場合に、大腸をすべて摘出する手術を検討することがあります。
①内科治療が無効(特に重症例)
②副作用などで内科治療が行えない
③大量の出血
④穿孔(大腸に穴があく)
⑤大腸がんまたはがんが疑われる状態
潰瘍性大腸炎の食事
☆寛解期(症状が落ち着いている状態)であれば厳密な食事制限は不要です。
・暴飲暴食は避けて、バランスのとれた食事を心がけましょう。
・刺激のある辛い香辛料は控えめにしましょう。
・アルコール類は適量であれば大丈夫です。カフェインを多く含むものはなるべく控えましょう。
☆活動期(症状が続いている状態)では消化しやすく、高エネルギー・高たんぱく・低脂肪・低残渣(食物繊維が少ない)の食事にしましょう。
・卵や大豆、脂肪の少ない肉類(鶏肉など)、魚類などの高たんぱくの食べ物は積極的に食べましょう。
・脂肪が多い食品や揚げ物などの油を多く使用している料理は控えめにしましょう。
・香辛料などの刺激物やコーヒー、アルコール類、炭酸飲料、冷えた飲み物、不溶性食物繊維は控えめにしましょう。
日常生活のポイント
寛解期(症状が落ち着いている状態)であれば通常の生活を送っていただいて大丈夫です。
ただ、あまり不摂生な生活は避けて規則正しい生活を送りましょう。
症状が治まると服薬を忘れがちになりますが寛解状態を維持して、症状が再燃しないようにするために、毎日きちんと服薬しましょう。
医療費助成について
潰瘍性大腸炎、クローン病はいずれも難病指定疾患で、重症度や治療内容に応じて助成を受けることができます。
当院は難病指定医療機関の認定を受けていますので、指定難病の医療費助成を受けられている方は指定難病に関わる診療・検査・投薬について助成を受けることができます。
また、院長は難病指定医の認定を受けていますので、指定難病の医療費助成の申請・更新に必要な診断書(臨床調査個人票)を記載することができます。
申請に関しては各保健センター・各保健福祉サービスセンターで行っていただくこととなります。詳しくは下記サイトをご覧ください。
また、院長コラムではもう少し詳細に記載していますのでご参照ください。